この時代に仏像の木彫に使われた鑿は、仏像の素材がやや軽軟質の樟ですので、切れ味が悪い鑿でも、綺麗に仕上げることができました。5世紀の古墳から出土した鑿の例から、飛鳥時代には木彫をするのに必要な多種類の鑿が存在していたことが解ります。それらは茎式鑿や袋式鑿ですが、まだ鋼を作る技術水準は低くて品質も良くなく、鑿の製造技術もあまり発達していなかったので、鑿の切れ味はあまり芳しくなかったと窺い知ることができます。ですから、このことが一つの理由として、細部まですべて鑿で削り仕上げするのではなく、仏像の表面を木屎漆法などによって盛り上げて、細部をヘラで仕上げ加工したのではないかと思います。
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