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(一) 平安時代から江戸時代



日本では、平安時代から明治時代になるまでに、多くの大工道具についての紹介書や解説書が出されます。代表的な書物を挙げると、平安時代中期の昌泰年間(898~901)に僧侶である昌住によって編纂されたとする「新撰字鏡」があります。


この書は、漢字を分類した辞典で、現存する漢和辞典では最古のものです。この書の中に、曲尺(さしがね)・鋸(のこぎり)・墨斗(すみつぼ)・鑿(のみ)・釿(ちょうな)・錠(やりかんな)・斧などの大工道具を表す漢字の意味が簡単に紹介されています。


同じく平安時代中頃の承平年間(931~938)に、源順(みなもとのしたごう)が編纂した辞典である「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」があります。この書は、当時の漢語がどのような和語で読まれていたかを知る貴重な資料としてばかりでなく、当時の社会・風俗・制度などを知る史料としても、それぞれの学問分野で重要視されている書物です。


この書の中にも、「新撰字鏡」と同様に、曲尺・鋸・墨斗・鑿・釿・鉇(やりかんな)・鉄槌など大工道具を意味する漢字が簡単に説明されています。


当時、それぞれの大工道具がどのような形態であったのかについては、「新撰字鏡」や「和名類聚抄」からでは明確にわかりませんが、平安時代に使われていた大工道具の種類を文字の上から知ることができます。


その後、鎌倉時代から江戸時代にかけて大工仕事をしている多くの職人絵図が描かれます。絵図の描かれた時代によって、当時どのような形態の大工道具が使われていたのかを具体的に解るようになります。


江戸時代は職人の世紀と言われたように、室町時代に中国大陸から伝来した台鉋や縦挽き鋸が一層発達し、大工道具の種類や形態が増加して行きました。この時代には、大工道具を紹介した百科事典も多く世に出されました。


江戸時代の代表的な紹介・解説書を挙げると、4代将軍徳川家綱時代後半の寛文6年(1666)、儒学者の中村惕斎(なかむらてきさい)が編著し、絵師の下河辺拾水によって描かれた絵入り百科事典の「訓蒙図彙(くんもうずい)」が出されました。その後、この書は大幅に増補改訂されて元禄8年(1695)に「頭書増補訓蒙図彙」、寛政元年(1789)に「頭書増補訓蒙図彙大成」という題名で刊行されました。


 6代将軍徳川家宣時代晩年の正徳3年頃、大阪の医師寺島良安が約30年かけて編集して出したとされる絵入り百科事典「和漢三才図会」があります。

また、9代将軍徳川家重時代終盤の宝暦11年に大阪の船大工金沢兼光によって書かれ、明和3年(1766)に刊行された絵入りの大百科全集「和漢船用集」があります。この百科全集は、11代将軍徳川家斉時代後半の文政10年(1827)に再版されています。


さらに、14代将軍徳川家茂時代終盤の元治元年(1864)に又玄斎南可(ゆうげんさいなんか)が出した絵入りの事典「道具字引図解」があります。


これらの事典は、その書物の持つ本来の目的から、当然のことながら書の中で大工道具の種類・形態などについて紹介をするだけで、大工道具の歴史や種類、使用法や製作法について体系的に論考した研究書ではありません。しかし、当時使われていた大工道具の種類や形態などを知ることができる貴重な資料です。




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