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むすびに



 今回は、値段が付けられた昭和7年の香取屋鉋カタログに基づいて、昭和初期の庶民生活に関連した物価や都市部の一般的な勤労者の平均的な月収、ごく一般的な庶民の月収、日雇い労働者の賃金、そして大工の一日手間賃を参考にしながら、当時の鉋鍛冶たちの評価をその値段差の面から比較して記述しました。

 このカタログには、本稿で取り上げた鉋のほかに他の銘の鉋も記載されていますが、誰が鍛った鉋なのか分からないので省きました。

 近年では、鉋や鑿は当然のように鍛った道具鍛冶の銘が付けられていますが、大工道具がよく売れていた以前の東京では、自分の銘を付けることができたのはごく僅かな有名道具鍛冶のみで、ほとんどの道具鍛冶は問屋の登録した銘で鍛っていました。自分の鍛冶銘ではどの問屋にも買ってもらえず、仕事も回って来なかったからです。

 昭和初期というと、大工道具全盛期の時代であり、この傾向はもっと強かったと思います。曾て問屋のことを「お棚」と道具鍛冶は呼んでいました。この語源は、自社の登録銘で鉋や鑿などを造らせた問屋が、その道具鍛冶の棚に造る原材料を置いて行ったことから由来していると言われています。

 したがって、昔の名の通った銘であっても問屋銘だと、いろいろな道具鍛冶が鍛っていたことが多く、誰が造ったかの道具鍛冶の判定は大変難しいのです。

 ともあれ、昭和初期の大工道具業界における名の知れた道具鍛冶の評価を、値段面から知ることができたと思います。ただ千代鶴是秀と共に、大工道具鍛冶の双璧と言われた9代目石堂秀一がすでに亡くなっていて、この時の香取屋カタログには載っていないので、値段面からの具体的な評価は分かりません。しかし、石堂秀一の健在当時は、千代鶴是秀とほぼ同格と評価されていたことから、それを判断するほかありません。



   平成22年11月吉日
   有限会社 スズキ金物店
     代表取締役 鈴木 俊昭



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