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《新発見/両刃鋸の出現時期について》



両刃鋸の出現時期1

はじめに



 7月の上旬、妻と一緒に東京上野に出掛けた折りに、不忍池畔にある台東区立「下町風俗資料館」に寄りました。この資料館は、古き良き下町文化を後世に伝えるために昭和55年(1980年)に開館されました。

 寄った理由は、もしかすると大工道具鍛冶関係の資料が何かあるかも知れない、と私が思ったからでした。学芸員にそのことを尋ねたところ、それらの資料はないとのことなので、1階展示室から2階展示室を見学し、階段を下り始めたその時、上がる時は気にもしなかったその階段の踊り場の壁に、丁髷を結った職人たちの絵が、16枚大きく描かれているのを正面に目にしました。

 踊り場であらためてよくそれらの絵を見たとき、そばにいた妻が、「あの目立て屋さんのそばに両刃鋸がある」と一枚の職人絵を指して、なにげなく言いました。私はその言葉を聞いた途端、はっとしました。両刃鋸の出現は、明治30年前後と言うのが通説であるのに、「丁髷を結った目立て職人のそばに、なぜ両刃鋸があるのか」、と驚いたからです。

 私は、これは新発見になるかも知れないと思い、再び学芸員にこの絵の由来について聞きました。「この絵は30年前の開館時からあり、江戸幕末から明治初頭期の下町の職人を描いたもので、いま開館当時のことを詳しく知る人がいないので、明日電話して下さい」とのことでした。

 私は翌日電話し、この絵の出所が明治22年に創刊された雑誌「風俗画報」に掲載された「新撰百工図」であること、そして平成15年に発行された「江戸東京職業図典」の中に、この「百工図」が掲載されていることを教えて戴きました。

 後日、私は地元の図書館に行き、この本を借りてきて、「新撰百工図」や関連文献についていろいろと調べ、詳しく知り得ることができました。そこで、「新発見/両刃鋸の出現時期について」と題して発表し、今までの通説を再検討する資料にしたいと思います。

 本稿は槌田満文編「江戸東京職業図典」(2003年)、中町泰子著「諸職風俗図像と新撰百工図」(2005年)、吉川金次著「鋸」(1976年)、土田一郎著「日本の伝統工具」(1989年)、平澤一雄著「鋸」(1980年)などを参考にさせて戴きました。


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