どのような理由で「源翁/玄翁」が「玄能」へと漢字表記されるようになったのかは解りませんが、広辞苑によると「能」の文字の意味に「よく事をなし得る力」とありますので、金槌にこの文字を宛てたのは,「源翁/玄翁」と名付けられた由来から、まさに適切であったのではないかと思います。
14代将軍徳川家茂時代の後半の元治元年(1864年)頃と思われる「道具字引図解(初編)」のなかでは、柄の短い頭の両端が尖っていない大きい鉄槌のことを「玄能」と、また頭の一方が尖っている鉄槌を金槌と紹介しています。これらも、石工職の使う鉄槌で、大工職の使う金槌ではありません。
では、大工職の使う金槌が、「げんのう」と呼ばれるようになったのは、いつ頃からなのでしょうか。
以上のことから推測すると、江戸時代の後半に鑿叩き用の金槌が出現して、それを「げんのう」と呼び、「玄能」と言う漢字で表記し、後の世に広まって行ったのではないかと思われます。
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