また、「大工」という言葉も古代に現われますが、現在の意味とはまったく違っていました。直接建築に携わる工匠の職業種名も、別の呼び名で呼ばれていました。大工の親方を意味する「棟梁」も、或る時代から使われ始めたのですが、それ以前は別の意味に使われていました。
これらについて、「大工道具」を研究する人たちや大工職・道具収集者などの間で、ほとんど関心を持たれず、語られもしなく、現在に至っています。それらの人たちの中で、大きな誤解も生じています。
これらの問題について解明するには、日本における古代から現代までの木造建築に携わる工匠の職業種名の変遷の歴史を紐解かねばなりません。わたしは、2015年5月に『大工道具文化論』を上梓し、第1章「建築に携わる工匠呼称の変遷」で詳しく語りました。そこで、その後の調査・研究を加えて「道具の歴史」欄に掲載するため、「大工と大工道具の呼び名について」と題して、これらについて語ってみましょう。
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