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むすびに



本稿を終えるに際して、室町時代中期に渡来した押して使う取手付き台鉋が、なぜ日本において取手が消え、引いて使う台鉋になったのか、また鉋使用姿勢が坐位から立位に、いつ頃そしてなぜ変化したのかについて、簡単に述べて置きましょう。


 まず押し鉋から引く鉋への変化ですが、中国・朝鮮半島で押し鉋が使われたのは、堅木の松が多く建築や木工製品に使用されていたために、押し削りの方が力を入れやすく、効率的に使えたからでしょう。そして削られた木材は多くが塗装仕上げされました。

 日本では柔らかい檜や杉が建築などに多用され、塗装せずに削ったままの白木仕上げを大事にするという独特の美意識を持っていたため、木材の表面を鏡のように削ることに力を注ぎました。その結果、力任せに押して削るのではなく、引いて丁寧に削るようになったのではないかと思います。

押し鉋が渡来してから、ほどなくして引き鉋も作られたようですが、絵画などの資料から江戸時代初期まで「押し」「引き」両方で台鉋が使われ、江戸時代中期頃からは「引き削り」にほとんどなって行ったようです。


次に鉋使用姿勢の変化ですが、19世紀始め頃までの木工職人を描いた絵画では坐位での鉋削りです。それ以降の絵画では、立位での鉋削りが多く描かれるようになります。坐位から立位への変化の大きな理由は、建築の作業能率を向上させることから生じたものと言えるのではないでしょうか。




   平成23年9月吉日
   有限会社 スズキ金物店
     代表取締役 鈴木 俊昭





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