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《日本の鑿・鉋の「裏スキ」について》



裏スキ1

はじめに



日本の鑿や鉋には、鋼が鍛接された裏刃という部分の中央に窪みがあります。この窪みの部分を「裏スキ」と呼んでいます。この「裏スキ」があると、鑿や鉋が裏刃の刃先まで平面にしっかりと研げ、良く削れる刃に仕上げることができます。「裏スキ」がないと、刃先まで裏刃全体をしっかりと平面に研ぐには容易ではありません。


また、「鉋は糸裏、鑿はベタ裏」と言われ、鉋の場合は裏刃先が糸のような細さの平面仕上げに、鑿の場合は裏刃先がある程度太く平面仕上げになるように研ぐのが良い、とされた大工職の間の格言です。


なぜ、鉋は糸裏が良いのでしょうか。それは、鉋がまだ1枚刃鉋であった江戸時代に遡ります。1枚刃鉋は、逆目でも削れるように、鉋台の刃口をできるだけ狭くし、木端返しと鉋裏が平行になるように台入れをします。そのため、その間に鉋屑が詰まりやすくなります。糸裏にすると、「裏スキ」により木端返しと鉋身との間の隙間が広がり、削った鉋屑が通り易くなる効果があるからです。2枚刃鉋になると、裏金によって逆目でも削りやすくする効果があるため、1枚刃鉋のように極端な糸裏にする必要もなく、また木端返しと鉋裏を平行にする必要もなくなりました。


鑿の場合は、木材に鑿を鎚で叩き込んだとき、ベタ裏でないと、「裏スキ」の窪んだ形の凸形に削られ、直線に削れないからです。特に幅の広い鑿にこの傾向があります。幅の広い鑿を三つ裏にする場合がありますが、三つ裏であることが定規となって、鑿が直線に叩き込まれて削れます。


このように「裏スキ」の状態は、鉋と鑿によって異なりますが、この「裏スキ」は日本独特のものであるとの説があります。本当なのでしょうか。もしそうであったのなら、いつ頃の時代から鑿や鉋に「裏スキ」が付けられるようになったのでしょうか。


本稿は、この点について調査・研究した成果です。以下、敬称は略させて戴きます。



日本の鑿・鉋の「裏スキ」について 目次







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(一) 日本の鑿における「裏スキ」の誕生 T 古代日本の出土鑿について U 古代中国の出土鑿について V 古代日本における「裏スキ」の出現 (二) 日本の鉋における「裏スキ」の誕生 むすびに (一) 日本の鑿における「裏スキ」の誕生